「記事から振り返る」と掲げながらも、振り返ることのできる記事はここで途絶えています。
この時期の心境は、前々回の記事で書いたとおりです。
1試合1試合を振り返る余裕はなく、ただただ終わりの見えないマラソンを走り続けているような、そんな感覚でした。
8月9日の徳島戦で新体制初勝利を挙げるものの、その後は再び長いトンネルへ。
10月5日のC大阪戦で勝利するまで、実に7試合未勝利。
守備の立て直しを第一の課題に挙げた大榎監督ですが、皮肉にも失点数は8月以降に大幅に増加。
未勝利だった7試合では、20もの失点を許してしまいました。
守備陣では、キャラ不在が大きく響きました。
清水で十分な経験のあるCBは平岡のみ。
それまでCBとしてカバーしてくれていた浩太も、ピッチに立つコンディションではありませんでした。
ヤコヴィッチが出場停止になると、平岡、ブエノ、弦太で3バックを組むこともあったし、浦和戦では六平のCBへのコンバート起用もありました。
継続するべき基盤を失い、戦術もメンバーも再構成することを余儀なくされました。
GKも含めて若い守備陣にとって、一度コントロールを失ったものを取り戻すのは難しかったのかもしれません。
ラインを上げるのか、下げるのか、4バックなのか、3バックなのか。
試行錯誤は続きました。
攻撃陣では、元紀のゴールが完全にストップ。
結局、彼の今季最後のゴールは、8月30日の鳥栖戦となりました。
「10番を言い訳にしたくなかった」と後に語っていた彼ですが、残留争いというプレッシャーの中で、なかなか思うようなプレーができなかったのかもしれません。
34試合全てに先発しながらも、ゴール数は6に止まり、後半戦のみの14試合出場だった昨季の7ゴールを下回る成績となりました。
ただ、6アシストという数字はチーム最多。
チームに大きく貢献してくれたことに違いはありません。
チームとしては、これまでの両WGがワイドに張る形からの脱却をめざしていたように見えました。
「人もボールも動くサッカー」と銘打ち、選手たちには"自由"が与えられました。
石毛、六平、拓也らがシュートを打つシーンが増えたことは、その象徴的な例だといえます。
劇的な勝利を挙げた川崎F戦では、六平がプロ初ゴール。
さらには、吉田が今季初ゴール。
完成には程遠いながらも、シュートへの意識が増した攻撃は、今後が楽しみに思えました。
攻撃陣で語らないわけにはいかないのが、村田の存在。
大榎体制で勝利した4試合のうち、3試合でゴールを挙げています。
徳島戦では、新体制初ゴールとクラブ通算ホーム600ゴールとなる記念のゴール。
古巣相手となったC大阪戦では、試合終了間際にダメ押しとなる3点目。
そして、川崎F戦のゴール。
あの歓喜の瞬間は、きっと多くのサポーターの脳裏に焼き付いているはずです。
おそらくクラブの歴史に残るゴールとなるでしょう。
残る新潟戦においても、こちらも試合終了間際の90分に、ノヴァコヴィッチの決勝ゴールをアシストしています。
出場時間462分間で3ゴール2アシストは、驚異的な数字です。
そして、彼がゴールに絡んだ5試合は全て勝利。(昨季も4試合全勝)
なかなか確固たる攻撃の形を見出せないチームの中で、彼のプレーは輝いていたし、チームとしてもそれをうまく生かす戦い方ができていたように思います。
天皇杯準決勝は記事にしていません。
残留争いを戦いながらも、タイトル獲得の可能性を残していた天皇杯。
しかし、準決勝直前の名古屋戦に勝利できなかったことで、残る2試合に全てを注ぎ込む必要が出ました。
ほぼフルメンバーのG大阪に対して、リーグ戦から9人を入れ替えた清水。
石毛、水谷、金子が中盤でトライアングルを形成し、CFは加賀美。
両サイドには、善朗と村田。
早々に2失点を許すも、執念で追い付いたその2得点には、彼らが巧みに絡んでいました。
この日、雨降る味スタのピッチに立っていた彼らの姿に、未来の我がクラブの姿を夢見ました。