イニエスタの加入はいいのだけど
JUGEMテーマ:Jリーグ
はじめに断っておきますが、この記事はイニエスタの神戸加入に反対する記事ではありません。
海外サッカーに疎い自分でも、彼のことはよく知っているし、これまでにJリーグに来た多くのスターの中でも突出した選手であると思います。
様々な報道から、彼が日本のサッカーに対して情熱をもっていることが伝わってくるし、W杯ロシア大会を控えたこのタイミングでこの小さなリーグにやってきてくれたことに対しては感謝しかありません。
しかし、それ以外の部分でもやもやとした部分があるので、ここに書いておきたいと思います。
『【神戸】イニエスタ、8281人の前で「8」ユニ披露「優勝」「アジア制覇」宣言』(スポーツ報知 2018/05/27)
『神戸・イニエスタ誓った!リーグV&アジア制覇 背番号8初お披露目に8281人』(デイリースポーツ 2018/05/27)
『神戸に早くもイニエスタ旋風 グッズ好調、ファンクラブ急増』(神戸新聞NEXT 2018/05/27)
『神戸サポ「ホンマに来た!」イニエスタ大喜利で歓迎』(日刊スポーツ 2018/05/26)
『イニエスタ「たくさん練習して学ぶ」神戸で歓迎イベント』(朝日新聞 2018/05/26)
これまでとは少しケタが違うように思います。
いや、実際に全く違うのでしょう。
フォルラン、ポドルスキ、ジョーなど、最近だけでも強豪国代表でプレーした選手がJクラブにやってきていますが、今回のようではなかったと記憶しています。
これだけの選手がJリーグに来るとなれば、当然スタジアムでの観客動員は大きく増えることになるでしょう。
実際に、自分の職場でも清水と神戸の試合について尋ねられました。
《清水は第33節11月24日(土)にホームでの神戸戦が予定されています》
これまでJリーグサポーターと海外サッカーファンはどこか相容れないような雰囲気がありましたが、イニエスタを目当てにJリーグのスタジアムに足を運ぶサッカーファンも増えるでしょう。
また、これだけ話題になれば、「よくわからないけど見てみたい」という人もいるでしょう。
ネットでは大喜利のようにイニエスタが日本に来ることを例える投稿が流行りました。
個人的にはあまり好きではありませんが、これも話題を広げるには一定の効果があっただろうと思います。
冒頭にも書きましたが、彼が日本のサッカーリーグを移籍先に選んでくれたことにはとても感謝しています。
選択肢は数えられないほどにあったはず。
神戸が用意した年俸は32億ともいわれていますが、おそらく金額だけなら他にも選ぶ余地はあったでしょう。
W杯開幕直前の大事な時期に、世界的には規模も小さくレベルも低いJリーグを選んでくれたのは、神戸の熱心な交渉があったからなのでしょう。
報道によれば、神戸の育成にも関わる予定があるとのこと。
単にお金だけもらって悠々とプレーをするのではなく、超一流のサッカー選手として、日本に何かを残したいという想いをもってくれたのかもしれません。
それは大いに歓迎したいと思います。
彼のプレーのレベル、そしてリーガ442試合出場でレッドカードが1枚もないという、その紳士的なプレースタイルにも好感がもてます。
アイスタでの生観戦は仕事の都合で既に微妙な状況なのですが、きっと自分も彼のプレーに夢中になるだろうと思います。
でも…なのです。
それでも…なのです。
どうもスッキリしません。
このままでいいのだろうか、という想いが沸いていきます。
『新旧8番の共演にファン熱狂!”神戸のイニエスタ”がお礼替わりのパス交換』(サッカーダイジェスト 2018/05/27)
『神戸・イニエスタは気遣いの人!背番号『8』三田に直接電話「譲ってくれてありがとう」』(サンスポ 2018/05/26)
『【神戸】三田、イニエスタに背番号「8」譲る「断る人はいない」』(スポーツ報知 2018/05/25)
『神戸MF三田 憧れイニエスタから電話あった 背番号8譲り「逆に光栄」』(スポニチ 2018/05/25)
『【神戸】イニエスタ、マジで日本に来た!背番変更不可のJ規約“超異例”一人のため変える』(スポーツ報知 2018/05/25)
『神戸 イニエスタ“シフト”で背番号8 J規約も動かした!26日サポにお披露目』(スポニチ 2018/05/25)
まずは、この背番号の問題。
今季8番をつけていた三田が、イニエスタに8番を譲るというもの。
三木谷社長も、Twitterで2人の「パス交換」について動画を付けて投稿。
各紙が"美談"として取り上げています。
でも、これは本当に美しい話なのでしょうか。
そうは思えない自分はひねくれているのでしょうか。
Jリーグ規約では、シーズン途中の背番号変更は認めていません。
8番が空いていれば問題はありませんが、今回のように既につけている選手がいれば、新たに加入した選手が付けることはできません。
Jリーグでは、開幕当初は試合ごとに背番号を決めていましたが、1997シーズンからは固定背番号制が敷かれています。
これは、選手の認知度を高めることが目的とのことです。
現在のルールでは、イニエスタが8番をつけるには、今季は別の空き番号をつけ、来季からつけるしかありません。
三田が了承したからいい、という話ではありません。
報道によれば、今夏からそのルールを変える可能性があるということです。
既に三木谷社長によって「8番イニエスタ」が既成事実になりつつありますし、報道もそれに飛びついています。
8番を"譲った"とされる三田本人も、おそらく本心から「光栄」と思ったのだろうと思います。
規約が変わったとして、他のクラブが直接的に不利益を被ることも特にないでしょう。
いってしまえば、「そんなことはどうでもいい」という話なのかもしれません。
とはいえ、これでいいのでしょうか。
何のためのルールなのでしょうか。
イニエスタが日本に来ることの、その"事の大きさ"は理解できますが、それはルールを急遽捻じ曲げてまで果たすべきことなのでしょうか。
神戸とイニエスタとの交渉の詳細な過程が明らかになっていませんので、背番号8番が"must"だったのかどうかはわかりません。
こうやってルールを捻じ曲げなければイニエスタが来ない、という話なら、もしかしたら賛成する人が多いのかもしれません。
でも、だったら初めから要らないルールなのではないでしょうか。
何となく、「イニエスタはJリーグ全体のために来てくれた」ような空気を感じますが、どんなに偉大な選手であっても、いちクラブの移籍交渉の一つであることに変わりはありません。
イニエスタなら特別、というのはどうしても理解できません。
背番号に限らず、他のクラブはルールの中で移籍交渉をしているはず。
今回の"特例"は、それを覆すものです。
もう一つはこちら。
『神戸 吉田監督、イニエスタ加入による外国人枠問題 判断はクラブに委ねる』(スポニチ 2018/05/26)
『神戸、外国人枠オーバー…イニエスタが今季7人目の外国人』(サンスポ 2018/05/25)
『J来季外国人枠撤廃へ 神戸「枠」オーバーで検討』(日刊スポーツ 2018/05/23)
イニエスタが神戸に加入するためには、今の神戸の外国籍選手の誰かを放出する必要があります。
報道の中では、来季からとしつつもこの外国籍枠についても変更の可能性を示唆しています。
思うことは、背番号の問題と同じです。
どのような経緯でイニエスタの契約の話が舞い込んできたのかわかりませんが、計画的であったとはとても思えません。
人数が溢れるのであれば、違約金がいくらかかろうと、戦力的にマイナスとなろうと、ルールに当てはめて対応するしかありません。
「イニエスタがJリーグを動かした」
このフレーズから自分が感じたのは、イニエスタの偉大さではなく、Jリーグの緩さと脆さ。
極端なことをいえば、(ないと思いますが)例えばイニエスタが「秋春制の方がいいのでは」と言ったなら、これまで反対してきたJリーグもそれに従う、という、そういう可能性もあるということ。
これは週刊誌のゴシップなので、信ぴょう性は乏しいですが、イニエスタ獲得にはDAZNの要望(圧力)が絡んでいたという話も。
今季の金曜開催を例に、大型契約を楯にして、DAZNがJリーグの運営に口を出すようになってきました。
DAZNによる視聴が徐々に定着してきていますが、決してDAZNのためのJリーグではありません。
いちクラブの移籍交渉によって、規約を変えるようなことがあっていいのか。
Jリーグは誰のためのものなのか。
Jリーグ百年構想とは何だったのか。
今回のイニエスタの移籍加入については、もやもやしたままです。
彼がプレーで期待を裏切ることはないでしょう。
きっとJリーグを盛り上げてくれるはずです。
今回のもやもやは、イニエスタに向けたものではありません。
ただ、今の流れは、これまで地道にJリーグの裾野を広げようとしてきた人たちの努力を軽く見ているような、そんな気がします。
イニエスタのプレーに沸く歓声の裏で、何か失ってしまうものはないだろうか。
それは、イニエスタではなく、日本のサッカー界が考えなければならないことなのではと思います。
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【J1第15節暫定】※1試合未消化
10位 勝ち点18
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28 F東京(+8)
27 川崎F(+10)
26 C大阪(+6)※、札幌(+3)
22 神戸(+6)、仙台(-1)
21 磐田(0)
20 柏(0)
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15 G大阪(-5)
13 鳥栖(-7)
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